花鳥風月

〜日々を彩る風鈴花の365日〜

この一杯

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 人生を変えるほどの「この一杯」〜コーヒー〜編。

家庭教師として生徒宅で頂いていた、一杯のコーヒー。

普段、家で頂く主な飲み物と言えば、緑茶とほうじ茶で

コーヒーはワンランク上の大人の味と遠くに思っていた。

指導が終わる丁度10分前に、シュンシュンと、お湯が

沸く音が聞こえる。階段を上がってくる足音と共に

立ち上るコーヒーの香。初めて目の前に差し出された際、

時計の針が夜10時を指していたため一瞬のためらいの中、

口にした。夜遅くに、カフェイン入りの飲料は飲まない

習慣であったのだ。戸惑いながらも、その香ばしい誘惑

は期待を裏切らなかった。いや、予想以上の美味しさに

虜になってしまっていた。一度口にしたら忘れられない味。

ほろ苦いだけではない。そのまろやかさ、香ばしさが完璧

なまでの深い味わいとなって、気品があるプライド高き

強い勇者の如くに振る舞い、微笑みかけるのだった。

まいった。これがコーヒーなのかと思った。この時

初めてコーヒーに恋した瞬間と言える。このトキメキは

お湯を沸かす所から始まる、いわば、心のこもった振る

舞いがあってこその味わい。家庭教師先での夜、温度と心

に見る、おもてなしの一杯からコーヒーへの道が出来た。

今では、夜遅くでもコーヒーが恋しくなってしまうほど。

今度は私が「この一杯」を入れられる人に是非なりたい。

コーヒーを入れてくださっていたお母様の笑顔は

春の陽射しのように穏やかなあたたかさに満ちていた。

 

☆本日の一言☆ おもてなしの心は豊かな味わいに通ず