花鳥風月

〜日々を彩る風鈴花の365日〜

鳥の名は

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昼間は木漏れ日が優しいが、夜の帳が下りると、辺りは星の輝きも届かない、真っ暗闇の小道がある。自分の背丈程に伸びた雑草という名の草たちが、風にお辞儀をしながら、ここは近道、と言わんばかりに手招きをしようとも、昼間も何に出くわすかわからない。その道は、はじめから無いものとして安全第一、と過ごしてきた。

 

ところが、ある日、目の前をヒラヒラ舞う、モンキチョウが銀杏の木の葉の舞と重なり追いかけているうちに、うっかりその道に入ってしまった。しまった、と思いつつも、後戻りをしない猫の気分で散歩がてら歩いてみた。こういう道は春先の方が、出会う草花にウキウキして楽しいのではないか、と余計なことを思いながら、道のようでいて茂みと化している自然の中を踏みしめて進む。季節が夏に逆戻りしたのではないかと思うほど、その道に汗を奪われたが、5分程度の短い道であっても、都会の喧騒から外れた緑の中は色濃く、辺りを飛び跳ねる虫のように、心なしか足取りは軽くなっていた。歩いてみると、長そうに見えたのは錯覚と思い込みであり、意外と短かかったことに、安堵よりは物足りなさを覚え始めた、足元がコンクリートの道へと変わった所で、鳥の鳴き声で呼び止められた。振り向くと、見覚えのない小鳥が目の前に木の実を転がしてきた。大きさは雀くらいだが、どう見ても、あの茶色い雀ではない。初めて見る鳥だった。これから、美味しいランチなのだろう。どこか得意げに胸を張っているようにも見える、その愛らしい姿に、真っ赤な蝶ネクタイでも、一つプレゼントしたい気持ちになった。

近づいても逃げないその鳥は、地面に木の実をぶつけて、食べやすいように割っているようだった。うまくいったのだろう。勢いよく飛ぶと、目の前の大木にとまり食していた。

普段歩かない小道は、「ヤマガラ」という、人懐っこい小鳥と出会った思い出の道となった。

かつては、おみくじ引きとしての芸で活躍したという、ヤマガラ。黄色の蝶も見た後の運勢は、どう?