花鳥風月

〜日々を彩る風鈴花の365日〜

箱根サイクリング その三 〜滑り出し〜

心配された御殿場でのアウトレット周辺の渋滞はさほどなく

乙女峠を抜け仙石原の棚引くススキを眺めると、直ぐに桃源台

へと到着した。2時間半ぶりに地面に足を着けると、冷たい風が

頬を撫でて行った。久々の山の空気だ。都内より気温が低く

陽射しも雲間に見え隠れして弱いため、特に寒く感じられる。

この中を自転車で疾走するのは、いささか寒過ぎるのではないか

と身震いをし気弱になりながらも、サイクリングへと向かった。

 

電動アシストに助けられながら、出だしはスイスイと快調に

進んで行った。これなら他の手段を使うよりも速く、運動を

しながら時間の節約にもなり、一石二鳥だとスタート時は

呑気に構えていた。途中から車が通れない遊歩道へと入ると

一気に木々の香りがたちこめた緑の世界となる。野鳥の囀りが

響き渡り右手には陽に煌めく芦ノ湖が広がり、何とも癒しの空間だ。

 

燃えるような赤、黄金の黄色といった落ち葉の絨毯で、一面覆われた

美しい地面に感嘆しながらのサイクリングを勝手に期待していたために

雨に濡れて湿っぽいばかりの枯れ葉色の道は、開花を終えた後の紫陽花

に興醒めしてしまうのと多少似た感覚で、ペダルを踏みしめていた。

まだ景色を楽しむ余裕が無く、下へと向きがちな視線でも、紅葉狩りを

満喫したかったのである。贅沢な望みではある。

 

それにしても、坂道でスピードが出ている時に限って、何故か道一杯に

大小様々な枝が散乱していて避けることも出来ずに、バキバキ、ボキッ

という音を響かせながら走って行く。それでも何の支障もなく走り続けて

くれる自転車を頼もしく思いながら、アップダウンが続く道を進める。

電動とはいえ、さすがに上りは手強く、力を込める。普段使わない足の

筋肉が、じわじわと引きつって来るのが伝わり、息も上がる。悲鳴を

上げそうになるところで坂道へと変わるため、何とか持ち堪えていた。