花鳥風月

〜日々を彩る風鈴花の365日〜

箱根サイクリング その七 〜カーブの恐怖〜

箱根神社へと向かうため白龍神社を後にした。

足が痛い、などと言ってはいられない。というよりも

ペダルに足を乗せられるということは、まず大丈夫だ。

そう言い聞かせながら進んで行く。しばらく行くと

箱根園へと到着した。プリンスホテル駒ヶ岳ロープ

ウェーがあり、引っ切り無しに車や人の出入りがある。

紅葉も良い色合いで人々の往来を歓迎していた。

 

箱根園より先は公道となり、車と並走である。

さすがに、これまでのように道に任せてのスピードを

出した運転は出来ない。車の列が途切れることなく

続くため、反対側へ横断するのにも一苦労である。

出だしからへっぴり腰となり、前へとなかなか進ませて

もらえない。加えて狭い歩道に当然ながら人も歩いている

ため避けなければならない。ブレーキをかける頻度が急に

上がり、肩を怒らせているのが分かる。走るよりも停まる

時間の方が増えて行く。箱根園の周辺は、まだ道幅が広い

からいいが、そのうちカーブで狭い道となるから生きた心地

がしない。

公道を走った経験が無いに等しい私は、車が横すれすれを

走って行くことに恐怖を覚えていた。

道路脇に積もった落ち葉も、この時ばかりは恨めしい。

下りの曲がりくねったカーブともなれば、対向車線が眼前に

迫って来る様な錯覚を起こし、其の内ぶつかるのではと心配

になり、怯んで反射的に止まってしまうことも度々であった。

其の前に派手に転んでいたことも影響し、とにかく事故が起き

ないよう慎重に慎重を重ねて体は緊張、益々強ばっていくのが

分かる。ああ、怖い・・・。これなら歩いた方が速かったに

違いないし、これほどの恐怖も感じなかっただろう。けれど

サイクリングを選んだのは自分。最後まで走り切らなければ。

怖くない、コワクナイ、大丈夫、ダイジョウブ、と繰り返し

呪文のように唱えてみても、力が入らなくなった。

箱根神社まで一気に走る予定であったのだが、途中の

山のホテル前で、とうとう自転車を下りた。気持ちを

落ち着かせるため、また活力を得るために、煌めく湖水を

眺めながら昼食を取ることにした。