花鳥風月

〜日々を彩る風鈴花の365日〜

キバタンのいる風景

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「バイバーイ。バイバーーーイ。」

何処からか響いてくる、元気の良い男子小学生のような声。それは

友と暫し別れる際の一日の締めくくりとして発せられる、悲壮感を

伴わない、無邪気で明るい声だった。人が見当たらないその場所で

自分の存在を誇示しているのか、あるいは閉館時間を意識し一日の

出来事を思い出して発しているのかは不明であったが、オウムは

「誰か」に喋っているかのように絶え間なく声を発していた。

 

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旅先で入った植物園に併設している鳥たちのブースに、その鳥はいた。

その声の大きさに半ば圧倒され引っ張られるようにして、私は自然と

その鳥の前に立っていた。ほどなくして、そのオウムの独り言は消えた。

私の姿を確認し観察し終えた途端に、「会いたかったの〜!」と言わん

ばかりの勢いで端から端へと駆け寄って来た。その姿に、また面食らい

つつも、私の心も連鎖反応していた。「なんて、かわいいの!」と。

大型のオウムの一種「キバタン」とガラス越しに会った瞬間は

少しだけ乙女チックな胸キュンが入っていた。

 

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「あなた、ダァレ?」と言いたげに首を傾げてくる、キバタン。

あれほど大声を出していたのに、もはや無言で見つめて来る。

全身を使ってアピールをしてくる様子は、暇つぶしなのか

はたまた気に入ってくれたのかは不明であったものの、自分に

興味関心を持ったことは、その愛らしい仕草から確かのようだった。

 

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ガラス越しに、何とか私に触れようと試みていた、キバタン。

目の前に手を差し出してみる。すぐに片足を持ち上げて手の

高さまで持ってきた。その瞬間、一瞬心が通ったような気がした。

安全の為とはいえ、もどかしい距離感に切なさが漂う。そして

もっとキバタンのことが知りたいと思ったが、日が沈みかけ

刻々と迫る列車の発車時刻を考えての自由に操れない時間を

前にして、今度は私が静かに声を発していた。

「バイバイ、またね!」

キバタンは表情こそ変わらないままだったが

決して「バイバイ」とは返してこなかった。

その代わりに、ジッと目を覗き込んできた。

「ありがとう。」

出会いの一時が暖かな夕焼け色に染まった。

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☆本日の一言☆旅の一期一会は心に宿る風景に