花鳥風月

〜日々を彩る風鈴花の365日〜

月の舟

12日の夕暮れ時に、ふと空を見上げると

今にも折れそうな細い月が、にっこりと微笑んだ口元のように

目に飛び込んできた。目線より45度ほど上に位置している。

月下には一面に雲が広がり、月を支えている様にも見えた。

流れ行く雲。月がその上を進んでいるようにも見えてくる。

ああ、月の舟だと思う。柿本人麻呂の和歌が頭には浮かぶ。

 

天海丹  雲之波立  月船  星之林丹  榜隠所見

天の海に雲の波立ち 月の船 星の林に漕ぎ隠る見ゆ (人麻呂・万葉集1072)

 

和歌をよんでいると、月を愛で、月の光に涙し、癒され、恋しい人の面影を見る、

いにしえ人の姿が目に浮かんでくる。古今、情景も人の思いも変わらないけれど

現代よりも、もっと突き詰めた純粋な想いの丈を見るようで、切なくも美しい。

月の満ち欠けは、人の心模様、恋模様のようでもあり、人を惹き付けてやまない。

思い煩い、思い嘆き、思い巡らせ、思い募らせ、思いを馳せ、思いを遂げる。

恋する気持ちを、そっと月の舟に乗せてみたい。目も月の如くに細くなった。

 

☆本日の一言☆ 人の想いを運ぶ月の舟 人の願いを照らす月光