月の舟
12日の夕暮れ時に、ふと空を見上げると
今にも折れそうな細い月が、にっこりと微笑んだ口元のように
目に飛び込んできた。目線より45度ほど上に位置している。
月下には一面に雲が広がり、月を支えている様にも見えた。
流れ行く雲。月がその上を進んでいるようにも見えてくる。
ああ、月の舟だと思う。柿本人麻呂の和歌が頭には浮かぶ。
天海丹 雲之波立 月船 星之林丹 榜隠所見
天の海に雲の波立ち 月の船 星の林に漕ぎ隠る見ゆ (人麻呂・万葉集1072)
和歌をよんでいると、月を愛で、月の光に涙し、癒され、恋しい人の面影を見る、
いにしえ人の姿が目に浮かんでくる。古今、情景も人の思いも変わらないけれど
現代よりも、もっと突き詰めた純粋な想いの丈を見るようで、切なくも美しい。
月の満ち欠けは、人の心模様、恋模様のようでもあり、人を惹き付けてやまない。
思い煩い、思い嘆き、思い巡らせ、思い募らせ、思いを馳せ、思いを遂げる。
恋する気持ちを、そっと月の舟に乗せてみたい。目も月の如くに細くなった。
☆本日の一言☆ 人の想いを運ぶ月の舟 人の願いを照らす月光