花鳥風月

〜日々を彩る風鈴花の365日〜

横笛の演奏会

10月5日 海蔵寺での鯉沼廣行 横笛の会「篠の韻」へ。

 

篠笛のお稽古の後、久々に鎌倉へ足を運びました。

静かな雨に、古都は風情ある趣を宿していました。

小町通りは歩くだけでも楽しいですね。歩き始めて

早々にジブリのお店が目に飛び込んで来て、思わず

吸い込まれるようにして、天空の城ラビュタ、トトロ、

魔女の宅急便などの世界に浸ってしまったのでした。

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キャラクター物には、さほど興味を持たないのですが

ジブリの世界は好きなため手に取って見てしまいます。

中でも、ノリタケとのコラボ商品のティーセット等が

目を引き「あら、なかなか可愛いわ♡」と思いながら

しばし見入ってしまいました。時間は午後16時近く。

朝から走り回り、思いっ切りお稽古をして、そろそろ

小腹が空く頃でした。鎌倉へ来た際、時折利用する

手打ち蕎麦屋「かまくら山路」さんへ寄ろうかとも

思いましたが、迫って来ている演奏会の開演時間を前に

会場へ向かうことに。会場でグーっと鳴らないでね、と

お腹にお願いをしながら、山路さんを通り越しました。

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向かう会場は、花の寺として知られている海蔵寺です。

鎌倉駅から徒歩20分程で、小町通りを抜けた後からは

緩やかな坂道を行く感じで、ひっそりと奥まった所にあります。

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初来訪の海蔵寺でしたが入り口からして風情が漂っており、こちらで

鯉沼廣行氏の初の生演奏を聴けることに否応なしに胸が高鳴りました。

境内は既に多くの人で賑わっており、期待感が一層高まりました。

生憎の雨で足元が悪い中でも、お着物を召されているご婦人方も

多数いらっしゃり、そのお姿は凛として大変美しいものでした。

その心を学び、私もそのようになりたいと思ったものです。

開場を待つ時間、聞こえてくる会話は天候のことでした。

「生憎の雨だけれど・・・先生の笛の演奏会は不思議なことが

起こるのよね。演奏の途中で急に雲が晴れて月が見えたりね、

今日も、もしかしたら途中で雨が止むかも、わからないわね。」

雨を気にするのは足元が悪いだけではなく、晴れていたら

中庭での演奏が聴けるためです。秋の夜空に溶け込む様に

響き渡る笛の音を私も聴いてみたい、どんなに素敵かしら、と

想像に酔いながら、もしかしたら晴れるかもしれないとの期待を

胸に開演を待ちました。雨は穏やかに静かに降り続いていました。

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自由席で、恐れ多くも最前列の席に座ることになりました。

初めて拝聴する生演奏の場で、指使いや息遣いまでを鮮明に

感じ取ることが出来るお席に、有り難い、と感激と感謝で

胸がいっぱいになりながら、一つ一つの音を心に刻みました。

擦れた音、風のように吹き抜けて行く音、丸みを帯びた音、

躍動感溢れる音、力強い音、か弱い音、甘い音、艶っぽい音、

まるで生き物のように会場を駆け巡って行くのを感じながら

時に眠りに誘われるほどに、その調べに酔いしれたのでした。

途中の休憩時間に入った時に嬉しいアナウンスが入りました。

奇跡的に雨が止み中庭での演奏を聴けることになったのです。

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 開演前には池に映る空が見えた中庭も、すっかり夜の帳が下りています。

この静寂な暗がりの中で、どちらで吹かれるのだろうと思いながら

笛の音を待ちました。予め音響を計算して立ち位置を決めて

いらっしゃるのだろうと思っていましたが、想像以上でした。

あちらこちらから聴こえてくるのです。

そう、この暗がりの中、雨の後で足元も悪いにもかかわらず

笛を吹きながら歩き回っての演奏をご披露くださいました。

聴かせたい、響かせたいという、その意識の高さにも胸を打たれます。

解放された笛の音は、涼やかな虫の音、雨上がりのしっとりとした

空気感、やや冷たさを帯びた夜風、風に乗って、ほのかに漂う

金木犀の香、揺れる水面に映る仄かな明かりと渾然一体となり

秋の夜に、聴覚だけではない五感で味わうかのような妙なる調べと

なって心を揺さぶりました。

それは幻想的で叙情的で詩的な美しい世界、夢のようなひとときでした。

沁み渡る笛の音の良さを改めて教えていただいた気がしました。

鯉沼氏による作詞で、スコットランドの古謡を皆で歌い

会場が一体となったところで、演奏会は終わりました。

演奏が終わると池の鯉が勢い良く飛跳ね、まるで

鯉までもが、拍手を送っているかのようでした。

 

来年3月には自分も舞台に立たせて頂けることとなり

この全身を駆け巡った音の感動を少しでもいかせるように

日々精進してまいりたい、と思った演奏会でございました。