ニューフェイス
20日の朝は、秋を感じさせる雲が一面に広がっていた。
暑い、暑いと汗を流す日々にあっても、その先には涼しい
爽やかな時が待っているという兆し。そういう四季の変化を
敏感に感じられる日本にいられて幸せだと実感しながら歩く。
道端には太陽光とアスファルトに焼かれたミミズが数匹、既に
物体化していた。中にはまだ動いているものもいる。その命に
気付くと、黙って見過ごすことが出来ない自分は、いつもの
ように地面を這うミミズをさっと持ち上げ、安全な土の上を
探し運んであげた。この日は1匹だった。ミミズに気を取られて
後ろから勢い良く飛ばして来る自転車とぶつかりそうになりながら。
午後からのお稽古では、ニューフェイスを迎えた。
七本調子の横笛である。
この3ヶ月間はプラスチック製の笛で練習をしていたため
晴れて竹製の横笛を手に出来、自然と手に馴染む感覚と
その自然な美しい響きに嬉しくなる。来年には、これを手に
着物姿で舞台に立てるのだと思うと、練習にも更に熱が入る。
凛と、しとやかに私色の音色を存分に輝かせたい。
願わくば青空にスーッと一筋出来る飛行機雲のように
舞台から客席へと余韻を帯びた音色が届きますように。